過電流遮断器の施設
過電流遮断器とは、一定以上の電流が流れると、自動的に電路を遮断する装置である。
電気設備技術基準では、必要な箇所に過電流遮断器を施設することを義務付けている。
電気設備技術基準の解釈
電気設備技術基準の定義文では次のように記している。
電路の必要な箇所には、過電流による加熱焼損から電線及び電気機械器具を保護し、かつ、火災の発生を防止できるよう、過電流遮断器を施設しなければならない。
この他、「電気設備技術基準の解釈」では次の箇所に過電流遮断器を施設するよう規定している。
- 特別高圧配電用変圧器の一次側
- 低圧屋内幹線から分岐して電気使用機械器具に至る低圧屋内電路で、低圧屋内幹線との分岐点から電線の長さが3m以下の箇所
接地工事の接地線や多線式電路の中性線、及び電路の一部に接地工事を施した低圧架空電線路の接地側電線には過電流遮断器の施設が禁じられている。これは、接地線は常に繋がっておく必要があるからである。
過電流遮断器・開閉器の施設場所
分岐点より3m以下の場所に過電流遮断器・開閉器を施設するのが原則。
- 分岐点より3mを超え8m以下の場所に施設するには
- 低圧屋内幹線の過電流遮断器の定格電流の35%以上が、分岐点から過電流遮断器・開閉器までの電線の許容電流になっていれば良い。
- 分岐点より、8mを超える場所に施設するには
- 低圧屋内幹線の過電流遮断器の定格電流の55%以上が、分岐点からの電線の許容電流になっていれば良い。
施設場所に関係してくるのは、低圧屋内幹線の過電流遮断器の定格電流、分岐点からの電線の許容電流、分岐点から遮断器や開閉器までの長さ、3つの要素である。
過電流遮断器の定格電流
電動機等が接続された幹線の過電流遮断器の容量は。
幹線の過電流遮断器の容量をIB、電動機の定格電流の合計をIM、他の負荷の定格電流の合計をIH、幹線の許容電流をIとする。
IB≦3IM+IH[A]
ただし、2.5I<3IM+IHの時は、
IB≦2.5I
遮断器類の動作
配線用遮断器(ノーヒューズブレーカ)
配線用遮断器は、過負荷や短絡などにより二次側の回路に過電流が流れた時、電路を開放し、一次側からの電源供給を遮断することで負荷回路や電線を保護する為に用いる過電流遮断器の一種である。
配線用遮断器は、傍熱形バイメタルを使用した熱動電磁形が多く、バイメタルの半限時特性と、バイメタルに併設された磁性体によって確実に回路機器を保護している。すなわち、小さな過負荷電流に対してはバイメタルが適当な時限で動作し、大きな過負荷電流に対しては電磁引外しが働いて瞬時に回路を遮断する。
配線用遮断器(英:Molded Case Circuit Breaker)は、MCCB,MCB,ブレーカーとも呼ばれる。
定格電流 | 遮断時間 | |
---|---|---|
定格電流の1.25倍の電流を通じた場合 | 定格電流の2倍の電流を通じた場合 | |
30A以下 | 60分以内 | 2分以内 |
30Aを超え 50A以下 | 60分以内 | 4分以内 |
50Aを超え 100A以下 | 120分以内 | 6分以内 |
100Aを超え 225A以下 | 120分以内 | 8分以内 |
225Aを超え 400A以下 | 120分以内 | 10分以内 |
定格電流の1倍の電流では動作しないこと。
ヒューズ
定格電流 | 溶断時間 | |
---|---|---|
定格電流の1.6倍の電流を通じた場合 | 定格電流の2倍の電流を通じた場合 | |
30A以下 | 60分 | 2分 |
30Aを超え 60A以下 | 60分 | 4分 |
60Aを超え 100A以下 | 120分 | 6分 |
100Aを超え 200A以下 | 120分 | 8分 |
200Aを超え 400A以下 | 180分 | 10分 |
400Aを超え 600A以下 | 240分 | 12分 |
600Aを超えるもの | 240分 | 20分 |
ヒューズを水平に取り付けた時、定格電流の1.1倍の電流に耐えうること。
分岐回路の施設
過電流遮断器の定格電流が50[A]以下の場合
低圧屋内電路の種類 | コンセント | 低圧屋内配線の太さ |
---|---|---|
定格電流が15A以下の過電流遮断器で保護されるもの | 定格電流が15A以下のもの | 直径1.6mm(MIケーブルにあっては断面積1mm2) |
定格電流が15Aを超え20A以下の配線用遮断器で保護されるもの | 定格電流が20A以下のもの | |
定格電流が15Aを超え20A以下の過電流遮断器(配線用遮断器を除く)で保護されるもの | 定格電流が20Aのもの(定格電流が20A未満の差し込みプラグが接続できるものを除く) | 直径2.0mm(MIケーブルにあっては断面積1.5mm2) |
定格電流が20Aを超え30A以下の過電流遮断器で保護されるもの | 定格電流が20A以上30A以下のもの(定格電流が20A未満の差し込みプラグが接続できるものを除く) | 直径2.6mm(MIケーブルにあっては断面積2.5mm2) |
定格電流が30Aを超え40A以下の過電流遮断器で保護されるもの | 定格電流が30A以上40A以下のもの | 断面積8mm2(MIケーブルにあっては断面積6mm2) |
定格電流が40Aを超え50A以下の過電流遮断器で保護されるもの | 定格電流が40A以上50A以下のもの | 断面積14mm2(MIケーブルにあっては断面積10mm2) |
過電流遮断器の定格電流が50[A]を超える場合
過電流遮断器1台ごとの専用回路とし、定格電流は負荷電流の1.3倍以下とする。
分岐回路の数に関する例
単相2線式100[V]で、40[W]2灯用の蛍光灯器具60台を接地した場合、分岐回路の最少必要数は。
ただし、蛍光灯の力率は80[%]、安定器の損失は考えないものとし、1回路の負荷電流は15[A]とする。
負荷の合計は、
(40[W]・2・60)/0.8=6000[V・A]
必要な分岐回路数は、負荷の合計を15[A]×100[V]=1500[V・A]で除した値となる
6000/1500=4
よって4回路必要になる。
漏電遮断器の施設
金属製外箱を有する60[V]を超える低圧の電気機器で、簡易接触防護措置を施していない場合は、漏電遮断器を施設しなけらばならない。
漏電遮断器には零相変流器(ZCT)が内蔵されていて、地絡電流を検出し遮断器を動作させる。
漏電遮断器の施設に関する例外規定
漏電遮断器の施設を省略しても良い場合は以下の通り。
- 機械器具を乾燥した場所に施設する場合
- 対地電圧が150[V]以下の機械器具を水気のある場所以外の場所に施設する場合
- 機械器具の接地抵抗が3Ω以下の場合
- 二重絶縁構造の機械器具を施設する場合
- ゴムや合成樹脂などの絶縁物で被覆した機械器具を施設する場合