情報ハイディング(情報隠ぺい、Information Hiding)
情報ハイディングとは、あるものに、本来とは異なる別の情報を秘密裏に埋め込むこと、またはその際に用いられる技術をいう。
情報ハイディング技術は、その利用目的や応用形態によりステガノグラフィと電子透かしの2つに分かれる。
暗号化とは違う情報ハイディング
暗号とは、メッセージの内容を読めないようにする技法をいい、英語で「cryptography」という。
「メッセージの内容を読めないようにする」のではなく、メッセージの存在そのものを隠してしまう技法が「steganography」という。
ステガノグラフィ(通信秘匿、Steganography)
ステガノグラフィ(通信秘匿)は、暗号技術を用いた「秘匿通信(セキュア通信)」とは違う。
「秘匿通信(セキュア通信)」は、「送受信されるデータそのものを暗号化して行う通信」を意味する。
対して「通信秘匿」は、「データに、ある情報を隠している事実を秘匿して通信を行う」ことを意味する。つまり、秘密裏に伝達される情報そのものを隠してしまう。
ステガノグラフィの例
下記のように、複数行に渡る文章があったとする。
- 予め文章を用意し、
- 意味が通るようにしておきます。
- しかるのちに別の語句を用意し、
- 適当なルールに従って埋め込みます。
- 全く異なるメッセージを、あるメッセージの中に隠す技法が、
- ステガノグラフィです。
上記文章の、各行の頭文字だけを繋げると、元の文章とは別のメッセージが現れる。
- あ・・・予め文章を用意し、
- い・・・意味が通るようにしておきます。
- し・・・しかるのちに別の語句を用意し、
- て・・・適当なルールに従って埋め込みます。
- ま・・・全く異なるメッセージを、あるメッセージの中に隠す技法が、
- す・・・ステガノグラフィです。
と、「愛してます」というメッセージが隠れていたことになる。このように、ステガノグラフィはメッセージの存在を隠す仕組みである。
ステガノグラフィは暗号化と合わせて合わせて利用する
ステガノグラフィでは、メッセージの埋込み方法が解明されると、メッセージの内容まですぐに分かってしまう。よって、ステガノグラフィは暗号の代わりにはならない。そこで、暗号化とステガノグラフィの両方の技術を利用する。
埋め込みたい文章を暗号化して暗号文を作り、それをファイルの中に隠す。こうしておけば、暗号文の存在に気付かれたとしても、埋め込んだ文章の内容までは知られない。
暗号では内容を隠し、ステガノグラフィでは存在を隠す。
電子透かし
コンピュータ分野で使用されるステガノグラフィに電子透かしがある。電子透かしは、画像や音楽などのデジタルコンテンツに情報を埋め込む情報ハイディング技術の一種。
電子透かしもステガノグラフィ同様、ファイルに情報を埋め込む。テキストや音声、画像や動画、プログラムなど様々なファイルに情報を埋め込む。そして埋め込まれる情報には、著作権情報、利用許諾者名、課金情報、コンテンツID、コピー可能回数などがある。
不正流用や不正コピー、データ改ざんの検出など、主に著作権保護用途に使われることを想定し研究開発が行われている。
紙幣の透かしとは異なり、見た目には分からないが、専用の検出ソフトを使用することで埋め込まれた情報を取り出すことができる。
電子透かしとステガノグラフィの違い
ステガノグラフィの応用から生まれた電子透かし。ステガノグラフィとの違いは、埋め込む情報がコンテンツに関係あるか関係ないかという点にある。
電子透かしは、そのコンテンツに関係のある情報が埋め込まれる。ステガノグラフィは通信の隠匿が目的であり、コンテンツはあくまでも情報を隠すものでしかない。